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インターネット殺人事件

日記

2006-01

2006-01-02

◆『天下騒乱』を観た

「最初 2 時間くらいは見逃しました。 あと第二部の途中で居眠りしたので、まともに観たのは第三部だけです。 その上原作を読んでいないという不真面目極まりない態度での視聴。」

  • 人に絡めて話をした方が楽なので、そうする。
    • 土井利勝 (西田敏行)
      • この世界では家康から「悪になれ」と言われたこの人が全ての江戸幕府の悪を背負っていた。西田敏行の悪人役はあまり見たことがない。
      • 実は強かったメソッドでそこそこの達人にされていた。刺客に襲われたときに自分で撃退していたのが印象的。
    • 柳生十兵衛 (中村獅童)
      • なんて甘ったれた十兵衛なんだ…。二十歳にもなって人を斬っていないだの「誰も死なせたくない」だの、おまえそれでも裏柳生の総帥かと言いたくなるような善人っぷり。
    • 荒木又右衛門 (村上弘明)
      • 渋い。十兵衛の師匠格にされている。隆慶一郎ワールドでは十兵衛の弟子じゃなかったっけ。
      • 終盤の切腹シーンは腹に刃物を刺す絵がなかったので、「これはもしかして隆慶ばりの実は生きていたメソッド発動か! ヤギューのシュゴシンか!」と期待したが、まあそんなことはなかった。
    • お江与 (かたせ梨乃)
      • 秀忠の正室。悪役。家光を排して愛する忠長を将軍にしようとグニャグニャする。両方ともお江与の実子なのに。
        • 「四代将軍忠長」という言葉にはなかなか脳内麻薬が溢れた。よりによって徳川最暗君の誉れも高いあの忠長を。
        • 言うまでもないが、家光と忠長のどちらを将軍にするかの暗闘が『甲賀忍法帖』及び『バジリスク』。
    • 白狐 (佐藤江梨子)
      • 裏柳生の女忍者。サトエリ。この配役を考えた人はバカじゃないのかと思った(誉め言葉)。
        • (誉め言葉)って書けば何でも許されると思ってるメソッド。
      • 芸能界には詳しくないんですが、この人は何か組織的ないじめを受けてるんでしょうか。『キューティー・ハニー』といいこれといい、申し開きのしようがないほど完璧に色物です。これが中川翔子だったら「ああ趣味なんだな」で終わるところですが。サトエリ本人は自分の方向性についてどう思ってるのかが気になります。
    • 和子 (高橋愛)
      • これのおかげではてなキーワード - 柳生十兵衛があんなことに…と少々複雑な思いが胸をよぎったが、本人が悪いわけではないので別にいいやと思った。
      • というか、この役って後水之尾帝に輿入れしたあの人か。『吉原御免状』か『かくれさと苦界行』で帝とラブラブだった人。そういえば秀忠の娘で家光の妹だ。
    • 徳川家康 (山崎努)
      • 序盤を見逃したので気づいたら死んでいた。利勝に迷惑な遺言(「お前が徳川の闇になれ!」)を残す。
    • 徳川秀忠 (山下真司)
      • 善人の秀忠は初めて見た。(←物凄く間違ってる)
    • 柳生宗矩 (柄本明)
      • 待ってました。
      • 素晴らしい宗矩でした。完璧に黒いのです。白か黒かで言うとブラックホールです。しかも基本的に十兵衛より強い。
    • 徳川家光 (池内博之)
      • 善人。十兵衛のマブダチ。基本的にボンクラなので土井利勝や宗矩の傀儡。
      • 寛永御前試合は描かれなかった。当たり前だ。
    • 徳川忠長 (海東健)
      • 善人。十兵衛のマブダチ。基本的にボンクラなのでお江与の方や本多正純の傀儡。
      • 猿を狩ったり真剣御前試合を催したりは描かれなかった。当たり前だ。
    • 本多正純 (綿引勝彦)
      • お江与の方や天海(!)と一緒に陰謀を巡らす人。敵役。
      • かの有名な吊天井での失脚がすごいことになっていた。「なんで吊天井があるの!?」「こんなこともあろうかと裏柳生が人夫に紛れてこっそり作ってました」「ギャフン(圧死)」って。自分の城に吊天井作られてて気づかないってどういうレベルの謀臣ですか。
        • 原作もこんなに無茶苦茶なのかと思ったが、噂を聞いているとどうも違うらしい。
    • 柳生兵庫助 (永島敏行)
      • 尾張大納言義直と一緒にチョイ役で登場。十兵衛と申し訳程度に立ち会う。

結論

「無難に作っているかと思いきや、ところどころ滅茶苦茶でなかなか楽しめました。 史実はいいようにねじ曲げているので(鍵屋ノ辻の決闘で桜井半兵衛が槍を取るとか)、 細かいことは気にしない方がいいでしょう。 やはり原作も読まねばなるまい。」

2006-01-03

◆[読書]『魔風海峡』(荒山徹、祥伝社文庫)

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題:魔風海峡 (上)祥伝社文庫: 本
続:祥伝社文庫
著:荒山 徹
符:ISBN4-396-33185-1
刊:祥伝社
型:(cm): 16
頁: 377p
値:¥169
文:文芸評論家 縄田一男氏絶賛! 「これだけ破天荒なストーリーをこれほどの熱気をもって書ける作家はいない」 慶長(けいちょう)の朝鮮征伐は泥沼と化し、秀吉も死の床に伏していた。徳川家康を牽制(けんせい)するためにも、豊臣(とよとみ)家にとって財政の立て直しが急務だった。「一千年前、欽明(きんめい)帝が朝鮮半島の任那(みまな)日本府に遺(のこ)した隠し財宝を探せ!」密命を受けた真田幸村(さなだゆきむら)は、真田忍団とともに釜山(プサン)に渡る。一方、その動きを察知した家康は服部半蔵(はっとりはんぞう)に追跡させる。日朝の忍者が威信をかけて戦う圧倒的時代巨編!

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題:魔風海峡 (下)祥伝社文庫: 本
続:祥伝社文庫
著:荒山 徹
符:ISBN4-396-33186-X
刊:祥伝社
型:(cm): 16
頁: 417p
値:¥350
文:文芸評論家 縄田一男氏絶賛! 「活字の迫力は、並の映像を軽々と凌駕(りょうが)してしまった」 真田幸村(さなだゆきむら)主従を待ち受けていたのは、王子・臨海君(イムヘグン)率いる高麗(こうらい)忍者の想像を絶する妖術戦だった。霧隠才蔵(きりがくれさいぞう)、筧十蔵(かけいじゅうぞう)が倒され、さらに根津甚八(ねづじんぱち)にも危機が……。明(みん)からの独立を勝ち取るため欽明(きんめい)帝の隠し財産を求める臨海君。彼を利用しようとする服部半蔵(はっとりはんぞう)。そして豊臣家再興を策すため財宝を希求する幸村、猿飛佐助(さるとびさすけ)らが剣と頭脳と忍術の限りを尽くす大作、堂々の完結!

「あらすじ。
石田三成は困っていました。 秀吉がそろそろ死にそうなのですが、度重なる朝鮮出兵などで豊臣家の財産が尽きかけているのです。 このままでは秀吉死去と同時に兵を挙げるであろう家康に対抗できません。 そんなとき、とあるルートから朝鮮に大量の埋蔵金があることを耳にします。
「これだ! 豊臣家を救うにはその埋蔵金を得るしかない!」
というわけで、三成は真田幸村と十勇士に埋蔵金発掘を依頼します。
が。
家康に埋蔵金のことがバレました。」

「そんな感じで、真田十勇士が服部半蔵と戦ったり、朝鮮王子 & 朝鮮忍者と戦ったりしつつ埋蔵金を目指します。 本当に頭の悪いストーリーです。そのままチャンピオンで連載できそうです。もちろん誉めてます。
特筆すべきことは以下 3 つでしょうか。」

  1. 朝鮮忍術の凄まじい荒唐無稽さ。それ忍法じゃないから。超能力だから。
  2. 朝鮮王子・臨海君という新たなキャラクター。
  3. 新解釈、なぜ徳川は邪悪なのか

「朝鮮忍術。
十勇士の忍法は山風クラス(人体取り外しや顔面変形といったレベル)なのに対し、 朝鮮忍者・檀奇七忍衆の忍法は明らかに超能力です。 いや、山風忍法も超能力と言えば超能力なんですが、 喩えて言うと「『バジリスク』だと思って読んでいたら甲賀の十名が十傑集だった」みたいな感じでしょうか。 これを忍法と言い張る荒山先生の開き直りは大したものだと思いました。
忍法の原理説明が酷かった例といえば『甲賀忍法帖』の薬師寺天膳がイチ押しですが - あれは本当に酷かった -、 『魔風海峡』はある意味それを上回っています。 なぜなら『魔風海峡』の忍法説明は説明していないからです。 「朝鮮にはこれこれこういう伝説があって、この忍法はその流れをくんでいるのでこんな怪奇現象が可能なんですよ」 というのは明らかに説明ではありません。 (伝説の出典は明記してありましたが、偽書かどうか確認する気もおきませんでした。)
「小説なんてどうせ全部嘘なんだから適当に書いときゃいいんだよ」と言わんばかりのその創作態度には感銘を覚えます。」

「それから臨海君(イムヘグン)。
荒山徹一流の「今まで取り上げられていなかったキャラをクローズアップしてみよう」によって伝奇世界に参戦した彼ですが、 主なオーバースキルは「朝鮮独立」と「剣術絶倫」です。 朝鮮王の第一王子でありながら、文を重んじ武を嫌う政府高官から嫌われ、王位継承から外されてしまう姿はそれなりに悲劇的ですが、 そこで「じゃあ加藤清正に日本剣術を習おう!」とか「諸悪の根源は朝鮮が清国の属国だからだ! よし、朝鮮を独立させよう!」と思い立つところが臨海君の魅力でしょうか(*1)
実のところ、臨海君が疋田豊五郎から新陰流を教わるところが一番盛り上がりました。 天才が良い師を得てぐんぐんレベルアップしていくストーリーは読んでいて気持ちいいものです。」
(『Sugar』とか『昴』とか)

「あと徳川。
隆慶一郎史観では、徳川家康という人物は基本的に善として描かれています。 史実上ひどいことをした場合には隆慶補正が発動し、 「確かにひどいことしたけど、あれは苦渋の選択だったんだ」とか 「あれは家康がやったんじゃなくて秀忠がやらせたんだ」とか 「家康は当代最強の知識人だから」とか 「家康はいくさ人だから」とか 「家康は道々の輩だから」とかいうフォローが入るわけです。
しかしながら、『魔風海峡』での家康の描写はこれと 180 度異なります。」

  • 家康 : 幼少の頃の人質体験でトラウマを負い、日本に身分制度社会を確立して全ての人間に俺と同じ抑圧の屈辱を味合わせてやろうと考える悪漢。こいつが天下を取るとバッドエンド。
  • 秀吉 : 裸一貫から己の実力のみで成り上がった自由人。理想的な日本を築いた偉いひと。

「基本的にこの二元論で話が進みます。 従って、秀吉派の三成、幸村、加藤清正などは自由を愛する高潔な武人、 一方家康派の本多正信、天海などは陰謀ばかり巡らす陰湿な文人として描かれます。
何というか、同じ「自由」というキーワードを理想としながらここまで隆慶一郎と解釈が食い違うのは見ていて楽しかったです。」

「そんなわけで、全体を通して大変頭が悪くてよろしいですね。 やはり荒山作品は一通り読まなければなるまいと決意。 次は複数の筋から『表題作がとてつもなく酷い』との情報を得ている短篇集『サラン』あたりを狙ってみましょうか。」

amazon 【 amazon 2日
題:サラン 哀しみを越えて: 本
著:荒山 徹
符:ISBN4-163-23940-5
刊:文藝春秋
年:2005/05/10
型:(cm): 19 x 13
頁: 260p
値:¥492
文:秀吉の半島出兵による戦乱の中、両親をなくした朝鮮の少女「たあ」。しかしその後「たあ」の心の支えとなったのは日本の武将・三木輝景だった。輝景へのサラン(=愛)を抱きながら、「たあ」がたどる数奇な運命は―。愛と憎しみ、そして捨てられぬ「意地」を描いた荒山徹待望の作品集。

◆最近のメール

「今に始まったことではありませんが、非常に扱いに困るメールばかり来ます。 最近のものを要約してみましょう。」

  • タモリは柳生新陰流居合二段
  • 蝉と言えば、アメリカ東部で死ぬほど蝉がわいたらしいですね (「17年ゼミ」羽化始まる 米東部で数十億匹予想)
  • 柳龍光にブードゥー柳生の V を加えてアナグラムすると「ヴォク ヤギュウ ナリ」になるので柳龍光は隠れ柳生
  • ツンデレを扱った AV が発売された ( URL も書かれていましたが、リンクすると星新一の三禁(エロ・グロ・時事)に違反するのでリンクしません。ググれ。)

「面白いんですが、面白がる以外にどうしようもないのでここに記録しておきます。」

*1: 朝鮮独立うんぬんは荒山先生の史観なのでうちに責任はありませんよ。荒山先生が言ってるんだから仕方ないじゃありませんか。

2006-01-07

◆[nDiary][バキ] 人が人と闘うための精神的武器について

「ちょっとした思い出話をしましょう。
2004-07-04 に一つの nDiary 用フィルタを作りました。」

  • これ。
    • 簡単に言うと、箇条書きをひたすら入れ子にする記法。

「そのときに書いたとおり、この記法は2005-07-02 [バキ] 第 212 話 ベストコンディションを書くために作ったものです。 つまり、板垣恵介先生が中国武術最大トーナメントをぶっ壊してまで登場させた敵キャラをわずか 19 ページで使い捨てるという蛮勇を振るったので - あれは本当に酷かった -、 その異常性に対抗するために新しいプログラムを作ったのです。」

「後で気づきましたが、この記法は簡易的なマインドマップでした。 マインドマップが 2 次元なら、 ulList は 1.5 次元くらいでしょうか。
思いつきをひたすら羅列することを促進し、脱線も無理なく許容するこの記法は、 その便利さゆえにシグルイ感想、雑記などに活躍することになりました。 いわば板垣恵介の狂気が新たな技術を生んだのです。」

「つまるところ、人が獣に対抗するには武器が必要であるように、 感想サイトが飛び抜けたクリエイターに対抗するには技術(ワザ)が必要なのです。 ここでは仮にその技術を精神的武器と呼びますが、 みんなもっと武器を作ったり使ったりしようよ、という話。」

  • 以下とっ散らかるので羅列で。
    • その後、主力兵器は Wiki に移行しつつあります。あれは本当にいい武器。
      • 喩えて言うならロボットかな。たいていのカスタマイズはできる上に、うっかりすると勝手に育ってくれたりするところが素晴らしい。
    • 「 blogger はプログラムを学ぶべきである」
      • 必ずしも真ではありませんが、まあ、自力で武器を作れるに越したことはないでしょう。
      • 何かを表現したかったらプログラムにしちゃえばいいんですよ。
      • 概念は多かれ少なかれクラス化できるはずなので、作家性も多かれ少なかれクラス化できると思います。
        • 一番いい例がゲーム化。あれは作品をプログラムで表現する作業ですから。
          • そういう意味だと『餓狼伝』は優れたハック。板垣恵介と夢枕獏の思想を見事に構造化してみせた例。
        • ただ許斐剛は無理。データ構造が分からない。理解できないものは実装できません。「考えもしないプログラムを作れ」と言われても「寝言は寝てから言え」としか答えようがないでしょう。
          • それでも無理矢理やるとしたら、 Google とおしゃべりして育つ人工知能くらいしか作りようがありません。しかし、それは果たして許斐剛なのか。
          • 『テニスの王子様』はさんざんゲーム化されてるじゃないかと思われる方も多いでしょうが、あれはこのサイトが好きな許斐剛をプログラム化していません。だから買わないしやらない。
        • 隆慶一郎の嘘のつき方はぜひプログラム化したいですね。「私はそうは思わない」って言い出しはじめるあたりの、史料を引用してるのに全然そんなこと書いてねえよ的脳内ストーリーが進行していく手法。あれを武器として使いたい。
    • なぜインターネット殺人事件ははてなダイアリーを使わないか。
      • 必ずしも使わないわけではない。時と場合によっては使う。今のところ使う必要がないだけ。
      • 自分で武器を作ったりしたいから。武器を作るのも好きだから。
        • はてなダイアリーの剣とか銃とか無線機とかの充実度は文句なしです。新兵はまずあそこで戦い方を学ぶべきだと思う。でもうちはもっとアナーキーな武器が使いたいんです。

2006-01-09

◆漫画に「合理的な豚」は登場するか

「これが面白かったので、漫画において「合理的な豚」的なものがどう扱われているかという与太話をしてみます。 以下の点に注意。」

  • 元々のエントリを馬鹿にする意図はありません。馬鹿はこちらです。
  • 筆者はあまり学がないので、ゲーム理論について詳しく知っているわけではありません。
  • 筆者は厳密な論理が苦手なので、抜けや間違いがあるかもしれません。

「免責条項を読み終えたところで具体的な話に移ると、 このように「限定状況でお互いがどう振舞うか」といったシチュエーションが出てくる作品と言えば、 大方の人は次のような漫画を挙げるでしょう。」

  • 福本伸行作品 (『銀と金』『カイジ』 etc )
  • 冨樫義博作品 (『幽☆遊☆白書』(末期)『レベル E』『HUNTER×HUNTER』)
  • 甲斐谷忍作品 (『ONE OUTS』『Liar Game』)
  • 『DEATH NOTE』

「これらを読んでいればすぐに気づくことですが、 漫画的には「合理的な豚」の状況、ナッシュ均衡に至った落ち着いた世界というのは、 実のところ物語の始まりでしかありません。 起承転結で言うとせいぜい起承くらいでしょうか。
少なくとも、上に挙げたようなその道の名作では、 ナッシュ均衡に至った状況を如何に崩すかというレベルから話が盛り上がり始めます。」

「では、具体的にどう均衡を崩すのか。
…という話をする前に、「合理的な豚」の条件について詳しく考えてみる必要があります。」

「実のところ、「合理的な豚」という話にはいくつかの隠れた設定があります。 はてなブックマークの言及や 元記事のコメント欄でも話題が出ていますが、 大雑把にまとめると次のような感じ。」

  • 「合理的な豚」の暗黙の仮定と、そこから想定される「合理的な豚」の壊し方
    • 豚同士はお互いの行動に干渉しない
      • 豚は喋れないし、嘘を吐かない
        • じゃあ大きい豚が「スイッチを押してくれたらエサの蓋が閉まらないようにするよ。仲良く分けよう」と言ったら?
      • 豚同士の暴力は発生しない
        • じゃあ大きい豚が小さい豚を食べてしまったら?
        • じゃあ大きい豚が体当たりで小さい豚を吹き飛ばしてスイッチに当てたら?
    • 檻の中の条件は挙げられたものが全てである
      • この勝負は一度きりなのか、それとも豚は恒常的にこの条件で飼われるのか?
        • 一度きりだとしたら、終了条件は?
          • じゃあ豚同士が語らって餓死寸前まで我慢して実験を中止させたら?
        • 恒常的だとしたら、エサの補給方法は?
          • じゃあ豚同士が語らってエサが補給される瞬間に人間を襲ったら?
          • じゃあ小さい豚が成長して大きい豚と互角になったら?
      • 他の条件はないか? (明かり、空気、臭い、音、観察する人間 etc )
        • じゃあ小さい豚が壁を破って電源コードを切断し、停電した闇の中でエサをかすめ取ったら?
        • じゃあ豚が豚権侵害を訴えて実験者を告発したら?

「これらは当然屁理屈です。「合理的な豚」というのはそういう話ではありません。 しかし、漫画的にこれを扱う場合、「ナッシュ均衡に到達したので豚さんたちは決められた通りに暮らしました」では文字通りお話にならないわけです。
面白くするにはどこかから意外性を引っ張り出してドラマを作り上げる必要があります。
人口に膾炙するのであれば、小さい豚さんがトンチで大きい豚野郎をギャフンと言わせるのがいいですね。」

「実際に均衡を壊す手段としては、「豚が嘘を吐く」と「実は檻の中には別のファクターがあった」が有力です。 詳しい話はネタバレになるので書きませんが、 『DEATH NOTE』は前者を多用することで、 『ONE OUTS』は後者を読者が「その手があったか!」と悔しがるような形で使うことで、 見事に限定状況を覆しています。」

「では、まとめを」
「まとめ。そうねえ。『世界はほんとうはもっと色鮮やかで豊かだし、残酷で不気味なんですよ?』ということしかないんじゃないの」
「そうですね」

「なお、余談ですが、『DEATH NOTE』の敗因は「どの条件で豚同士が均衡しているのか」が読者に理解できないほど複雑になってしまったことだと思われます。 ただ、この経験は「どこまでなら読者がついて来られるか」というサンプルとして掛け値なしに貴重なので、 作者及びジャンプ編集部はこれにめげずに今後もこういう話を作っていってほしいものです。いや本当に。
友人が『DEATH NOTE』人気の凋落について「夏コミでは早すぎ、冬コミでは遅すぎた」と嘆いていたのが印象的でした。」

2006-01-12

◆[バキ]チャンピオン 2006 年 1 月 26 日号が凄い

「見どころ満載なので買っておくことをお勧めします。」

  • 魅惑の 6 大ツッコミどころ。
    • 巻頭カラー、『ナンバ MG5 』番外編『無法松』。いつも思うが柴犬の松が可愛い。
    • 『範馬刃牙』。遂に刃牙が戦い始めた。
      • リアルシャドーで。
        • えええ。
          • しかも対戦相手はあいつ。
            • えええええ。
    • 板垣恵介×レイザーラモン HG ガチンコ対談。
      • 2/3 の『たけしの誰でもピカソ』に二人が出演する(?)らしい。
      • 対談内容もひどくコア。「オリバは実在のボディビルダーですよね?」とかいう会話を普通にしてる。さすが HG 、「ドリアン海王がキャンディを欲しがるところが最高」と言うだけのことはある。
    • 『ドカベン』の表紙に水島新司画のブラックジャック & ピノコが登場。
      • ピノコがものすごく絶妙に不細工。今までも下手なピノコや歪んだピノコはいましたけど、この不細工さはユニークすぎる。これだけシンプルな線でここまで不細工にできるものなのか。
      • 画像を載せようかと思いましたけど、このインパクトを体験してほしいので敢えて載せません。
    • 『サイカチ』に菩薩の拳のパロディが。
    • 『ガキ警察』が過去キャラ大集合を始めた。二つ名が増えてるので Wiki に書かなきゃ。

2006-01-14

◆[読書]最近のおすすめ本

「「時代物以外で何か最近おすすめの本はないの?」という無礼極まりない質問を受けたので(*1)、 感想を書いてなかったおすすめ本を紹介します。」

amazon 【 amazon 24時間
題:老ヴォールの惑星次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809): 本
続:次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809)
著:小川 一水
符:ISBN4-150-30809-8
刊:早川書房
年:2005/08/09
型:(cm): 15 x 11
頁: 379p
値:¥330
文:偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだ―通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集。

第弐斎藤 2005-08-11日々是魚を蹴る 2005-08-26 あたりで評価されていたので買いました。 Amazon の書評から引用すると、

  • 監獄として使われる迷宮の中ではぐくまれる社会
  • 地球とかけ離れた環境に生きる種族の生態
  • バーチャルリアリティとファーストコンタクト
  • 異世界での漂流記

という四本の短篇が収録された本。 個人的にはどれも極端な限定状況を描いているところが好きです。 『ドグラ・マグラ』もそうですけど、「物語はこの部屋の中だけで進む」などの制約がある作品はいいですよね。 五七五の制約が俳句という芸術を高めたように、限定はいいものを生みます。」

amazon 【 amazon 24時間
題:余は如何にして服部ヒロシとなりしか角川ホラー文庫: 本
続:角川ホラー文庫
著:あせごのまん
符:ISBN4-043-80601-9
刊:角川書店
年:2005/11/10
型:(cm): 15 x 11
頁: 196p
値:¥50
文:第12回ホラー小説大賞短編賞受賞作! 同級生の姉に連れられて訪れた古い家屋。軒下には文化祭のセットで作ったはりぼての風呂。彼女はここで汗を流せと自ら服を脱ぎ始める。グロテスクな不条理の世界が選考委員の度肝を抜いたホラー大賞短編賞受賞作!

2005-12-23 初歩から始める文書偽造 柳生篇で書き忘れたんですが、 嘘つきに愛されやすいフレーズやタイトルというものがあります。 『余は如何にして基督信徒となりし乎』あたりはその最右翼と言えるでしょう。 このクソ真面目さが何とも言えないんですよね。 これを茶化したくならない嘘つきはいません。」

「というわけで、『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』というタイトルを見た瞬間「こいつは嘘つきだ」と判断して買いました。 内容は 69 点くらいかな。嘘つきとして育つ芽はありそうなので今後に期待。 あと『克美さんがいる』は清水義範の短篇に同じアイディアのものがあったはず。」

amazon 【 amazon 2日
題:珍説愚説辞典: 本
符:ISBN4-336-04529-1
刊:国書刊行会
年:2003/09/20
型:(cm): 22
頁: 749p
値:¥2,900
文:大作家から大学者、ローマ法王から大新聞まで、古今の書き物から、約3500の珍説愚説を収集、1500の項目ごとに並べた、類例のない大辞典。ついに完訳なる! (序文「珍説愚説礼賛」より) どんな分野でも、我々に示される歴史は断片でしかない。歴史は山の頂をぴょんぴょん飛ぶばかりで、ぱっくり口を開けた深淵にほのみえる、妖しい薄明かりをしばし眺めるだけの余裕を我々に与えてはくれない。どの教科書を播いても、出てくる人物は同じであり、同じ判断基準であり、決して厳しくはない同じ批判であり、同じ忘却である。それは知性の歴史である。否、知識だけの歴史である。(中略)まこと、愚かしさがあるからこそ、知性も存在しうるのである。(中略)珍説愚説は何よりも、その時代の鏡である。(中略)ある時代の愚かしさを白日の下に晒すことは、おそらく、当時の輝かしい出来事だけを綿密に調査するよりずっとその時代についての理解を深めてくれる。 【自然の調和】 ■どうして星の位置が決まっているのか? 星々は天空を回っています。しかしあれだけ数が多いのに、互いに衝突することはありません。星は私たちの目を愉しませるために、適度に離れた場所に置かれているのです。壮麗な丸天井に点在する金色の点模様と同じことです。 『トロワ神学校の元神学教授による人々への、とくに田舎に住む人々に対して書かれた随想』。「ディマンシュ」1854年 【労働者】 ■怠け者 稼いだ分は、いや時には前借もして、ことごとく使い果たすその日暮らし。これがパリの労働者階級のごくふつうの生活である。給料を多く貰っている労働者で、三日働けば一週間分稼ぐことの出来る者たちは通常、あとの四日を無為と放蕩で過ごしている。 C・M・T・デュシャテル『慈善について』(1926) 【エスカルゴ】 ■どうやって頭を切るか エスカルゴの頭を切るには、まず左手で貝殻をおさえ、大きな鋏の下側の刃を首の下に当てる。それから蝸牛が普通の状態に戻るのを待つ。蝸牛が首を十分にのばし、角が黒い液体(それは蝸牛の認識を左右する最も有効な成分らしい)で包まれたら、上の刃が大きな角の後ろあたりの首に触れるまでゆっくりと鋏を閉じてゆく。とこまで行ったら、あとはA(ア)の字を発音するくらいすばやく指を動かして蝸牛の首を切るのである。 ジョルジュ・タレンヌ『蝸牛学、あるいはエスカルゴと呼ばれている蝸牛に関するきわめて興味深い実験記録』(1808) 【絵画】 ■序列これあり 風景をみごとに描く画家は果物や花や貝殻を描く画家より上等です。生きた動物を描く画家は動きのない静物画の画家に優ります。絵筆によって神の造られた人間の顔を写そうという画家は他の画家よりはるかに優れた画家と言えましょう。人間の顔こそ、神が造られたなかで最も完璧な作品なのですから。 シャルル・ル・ブラン[仏派絵画の創始者。1619〜90。47年以降約40年間に亘って仏画壇に絶大な影響を及ぼした。ヴェルサイユ宮殿の装飾も担当した]の講演(1667)から。アンリ・ジュワン編註『王立絵画彫刻アカデミー講演集』(1883)所収

魚石庵 - 読書録「珍説愚説辞典」で知った本。 世界の珍説・愚説を集めるという聞いただけでワクワクするような企画です。 まだ全部読んでいませんが、「進化」が秀逸。」

【進化】

■おもしろい考え方

聖書は進化論の教育とは明らかに矛盾する。 有史以前の動物は、あるいは少なくともその多くはまごうかたなき怪物であり、 悪魔が造りだしたものであって、何らかの進化の影響を被らざるを得ない。 しかし、それとは反対に、神が造られたあらゆる創造物は最初から完璧な存在なのである。
『新しい土地、人類へのメッセージ』(1927)

「爆笑しました。よく出来た生物は designed だ。よく出来てない生物は悪魔の design だ。 この理屈はぜひ ID (インテリジェント・デザイン)論に取り込むべきだと思う。」

*1: まるでうちが時代物の話しかしてないみたいな言い方じゃないですか。とんでもない。時代物の話などしていません。伝奇物の話をしているんです。

2006-01-22

◆最近のおすすめ本(伝奇)

【 amazon 24時間
題:武蔵伝 1 (1)SPコミックス: 本
続:SPコミックス
著:石川 賢 ダイナミック・プロ
符:ISBN4-8458-2660-7
刊:リイド社
値:¥310

「言わずと知れたケン・イシカワの宮本武蔵陵辱本。柳生の扱いもたいがい酷いです。必読。」

amazon 【 amazon 2日
題:弓道士魂―京都三十三間堂通し矢物語レジェンドコミックシリーズ―平田弘史作品 (7): 本
続:レジェンドコミックシリーズ―平田弘史作品 (7)
著:平田 弘史
符:ISBN4-434-07160-2
刊:マガジン・ファイブ
年:2005/12
頁: 445p
値:¥1,980
文:単行本未発表ページを大幅に収録した《初の完全版》! 京都三十三間堂「通し矢」に挑む弓道武士の血まみれの闘魂! 江戸時代初期、京都三十三間堂を舞台に諸藩の豪傑武士たちの間で矢を射通す「通し矢」という弓の競争が行われていた。盛り上がるにつれ「通し矢」は、諸大名の名誉と面目を賭けた命懸けの記録更新競技となり、ついには死者が続出するほどの熾烈さを極めていった。大事な家臣を失いこの常軌を逸した競争から手を引く大名も現われたが、共に家康を父に持つ御三家の尾張藩主・義直と紀伊藩主・頼宣は、兄弟であるがゆえか、お互い異常な競争心を燃やし、次々と強弓の遣い手を京都へ送り込んでいった……。そんな弓道熱に浮かされた紀伊藩の下級武士に育った若者、星野勘左衛門も<天下惣一>を目指すべく凄絶な「通し矢」への道を死にものぐるいで歩むことになる……。

「平田弘史先生が三十三間堂の通し矢を描いた劇画。通し矢とはこんな競技。」

  • 矢を三十三間(約 120m )射通す。
  • 24 時間ぶっ続けで行う。
  • 過去最高記録を出せなかったら基本的に切腹。

「これを徳川義直と徳川頼宣が藩の威信をかけて競います。 この設定だけで分かった、落ち着けと言いたくなるほど無惨です。」

amazon 【 amazon 24時間
題:無名の人々異色列伝: 本
著:平田 弘史
符:ISBN4-88379-204-8
刊:青林工芸舎
年:2005/12
頁: 303p
値:¥990
文:「お父さん物語」を経て辿り着いた新たな境地。歴史に埋もれた名もない個人の偉業を執念で調べ上げ、対話を重ねることによって生まれた本作は、90年代以降の平田作品の方向性を決定づける重要作となった。番外編として61年発表「人肉献上」を追加収録の上300頁を超すヴォリュウムで再登場!解説:成瀬正祐

「平田弘史先生が歴史に埋もれた凄い人を描いた劇画。基本的に以下略。」

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題:修羅の刻 15―陸奥圓明流外伝 (15)月刊マガジンコミックス: 本
続:月刊マガジンコミックス
著:川原 正敏
符:ISBN4-06-371021-1
刊:講談社
型:(cm): 18
頁: 235p
値:¥140
文:時は江戸。信州で催された御前相撲で1人の若者が繰り出した戦慄の張り手。その才を認められ浦風部屋に入門した若者は、四股名を得て土俵に上がる。名を雷電為右衛門(らいでんためえもん)。後の世に「無類力士」と称された男の、快進撃の始まりである。だが、その姿を見つめる「鬼」が……。

「雷電 VS 女性陸奥。ちょっと目を離した隙にとんでもないことしやがる。」

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題:兵法家伝書―付・新陰流兵法目録事岩波文庫: 本
続:岩波文庫
著:柳生 宗矩
符:ISBN4-00-330261-3
刊:岩波書店
年:2003/04/16
型:(cm): 15 x 11
頁: 186p
値:¥370
文:柳生宗矩(一五七一―一六四六)は,徳川将軍秀忠・家光の兵法師範であった.五十を過ぎてようやくこの道の滋味を得た,という宗矩は,以来次々と伝書を書きついだ.行政官僚への転進を機に,新陰流の技法・理論を集大成して『兵法家伝書』を完成.十余年後に書かれた『五輪書』とともに近世武道書の二大巨峰といわれる.

松岡正剛の千夜千冊 - 『兵法家伝書』柳生但馬守宗矩を読んで買いました。 古文は読み慣れていないので最初買う気はなかったんですが、 パラパラとめくっていて家伝書の図を見た瞬間に呆れ返る。 なんと型の説明が天狗なのです。 『新陰流兵法目録事』の『天狗抄』という部分のようですが、天狗だぜ、天狗。 素敵過ぎるので即購入。」

【 amazon 2日
題:アメリカ侍古武術修行: 本
著:デイヴ ローリー
訳:大田 直子
符:ISBN4-7601-2858-1
刊:柏書房
年:2006/01
型:(cm): 19 x 13
頁: 212p
値:¥299
文:「トイレの中でも武術か―先生から武術で生活が変わるだろうと言われたとき、トイレ・トレーニングまで含まれているとは思ってもみなかった…」1968年アメリカ。ジーンズを履き、ジャンクフードで育った少年が柳生新陰流を学ぶことになった!悪戦苦闘のノンフィクション。

「今回最大の衝撃本。帯から引用すると、

本物の SAMURAI スピリットを求めて
1968 年アメリカ、中学生だったローリーは、セントルイスに住む「侍」に入門、柳生新陰流を学ぶことになった! ジーンズとジャンクフードの少年が、文化と時代の壁を越えて古き良き "SAMURAI スピリット" に挑んだ、悪戦苦闘のノンフィクション!!

だそうで、もお超アメリカ柳生。最近神様が私の願いを!! 本気でドッキリかと思いました。 ちらっとしか見ていませんが、柳生の歴史についてもそれなりに書かれているのでトンデモの類ではなさそう。」

◆雑記

  • ロマサガ 4 週目。今回はアルベルト。やっとダークが登場。
  • 「隆慶一郎的には和泉元彌最強」と唱えていたサイトをロスト。柳生新陰流が金春流と秘伝を交換した話を引いて「空中元彌チョップなんてダミー」「元彌が本気になればプロレスラーの一人や二人」「元彌は人には使用えぬ技を隠し持ってる」とかそういうノリの日記。どこだっけ。(2006-01-29 追記 : デカダンス・レジスタンス 2005-11 付近だった。)

2006-01-29

◆今日の勘違い武士道

「友人から Gyao! で『柳生一族の陰謀』が公開中との情報を得たので漫画喫茶に(自宅はナローバンドなので)。
見始めたはいいものの、序盤 30 分くらいで再生がうまく行かなくなり、 CM をはさんで先頭に戻ってしまう現象を 2 回ほど繰り返す。 仕方ないので諦めて別なものを観ることにしました。 せっかく萬屋錦之介の宗矩が「親に会うては親を殺し、仏に会うては仏を殺す」って言い始めたところだったのに。」

「というわけで、勘違い武士道つながりで『LAST SAMURAI』の DVD を鑑賞。今更。」

「…予想以上に凄まじい勘違い武士道でした。『柳生一族の陰謀』も間違ってるけど、『LAST SAMURAI』もかなり激しく間違ってる。
時代考証が間違ってるとかケチなことを言うつもりはなくて、武士道の概念自体が想定と異なってるという話です。 このサイトの武士道イメージは隆慶一郎史観に冒されているのでそれはそれでどうかと思うんですが、 いやこれ「いくさ人」でも「犬死に気違い」でもないでしょ。」

(以下の文章はネタバレを含みます)

「剣術や衣装、民家のセットといったあたりは非常によくできていると思いますが、 ハリウッド的ヒーロー像がここまで武士道と噛み合わないとは。
…『柳生一族の陰謀』は DVD で買おう。」

2006-01-31

◆[読書]『戦中派虫けら日記』(山田風太郎、ちくま文庫)

amazon 【 amazon 24時間
題:戦中派虫けら日記―滅失への青春ちくま文庫: 本
続:ちくま文庫
著:山田 風太郎
符:ISBN4-480-03409-9
刊:筑摩書房
年:1998/06
型:(cm): 15 x 11
頁: 602p
値:¥700
文:あの時代、青空だけは美しかった。20歳の青年は、軍需工場で働いていた。医学校を志しながら、本を読んでいた。どんな将来のためかまるでわからないまま。

「 1942 年 11 月 〜 1944 年 12 月までの山田風太郎(当時 20 歳)の日記。 太平洋戦争は 1941 年 〜 1945 年であり、つまりこれは戦時中のヤング山風が何を考えていたかの記録です。」

「これはいい本を薦めていただきました。感謝いたします。
読み始めるに当たってはメイキングオブ山風的な内容、 つまり未来の山風が如何にして形成されたかが書かれていることを予想していたんですが、 そういう意味では見事に予想を裏切られました。 読んでいて「え? これがほんとに山風になるの?」と不安になるくらい山風エッセンスがありません。 忍者の話題など全く出てこないし、探偵小説の話題も極めて少ない。明治時代についてもほとんど言及されない。 性的な話も全然ない。ないないづくしです。」

「では何が書いてあるかというと、普通です。山田風太郎青年の日々の出来事や読んだ本、考えたことなんかが書かれています。 日記にしては整いすぎている(つまり誰かに読まれることを想定している)気もしますが、 凄く真っ当に若者らしいことを書いています。」

  • 「周りの奴は向上心のない馬鹿ばっかりだ、でも自分も奴らと大差ない」と自嘲してみたり。
  • 「来年春には医師専門学校を受験するのに全然勉強してない」と嘆いてみたり。
  • お金が入ると暴食してみたり。
  • 試験に落ちたあと急激に日記の量が減ったり。
  • それまで口語文だった日記が急に数ヶ月文語体になったり。

「読み通しての感想は「山田君はいい奴だなあ」ということに尽きます。
真面目だし、 20 にしては驚くほど語彙が豊富だし、向上心もある。 文芸誌に短篇を送って採用されていたりもする。 しかし驚くほど食い意地が張っていたり、人間関係に悩んで落ち込んだりといった側面もある。
後の山風を彷彿とさせる点といえば、人間観察の鋭さと、冷血にも見えるほどの理性的な判断でしょうか。 昭和十九年七月八日の日記にこう書かれています。」

「山田は皮肉屋だ」とよくいわれる。
しかし自分はべつに故意に意地悪い観察をしている覚えはない。 人間は美と醜の両反面を持っていることは事実である。 そのどちらをも自分は唇に上せたい。 ただ人間は醜を美の仮面で覆うことが多いから、その刹那に真実を指摘したい衝動にかられ、 かくて「山田は辛辣だ」といわれることになるに過ぎない。 美だって、公平に認めようとしているのである。

「言いたいことは理屈的にも心情的にも非常によく理解できるんですが、 周りからすれば、こういうことを考えたり言ったりするのがもうアウトだったんでしょう。 こういうタイプは愛さずにはいられないなあ。」

「そのほか目に付いた点など。」

  • 戦争についての考え方は非常に興味深かった。配給が遅れることや情報が少ないことで国を非難したりしているものの、全体としてはごく普通に太平洋戦争を肯定しています。「本土決戦になれば日本人は皆玉砕するのが当然」という趣旨のことを書いていたり。今でこそ戦争 = 悪というイメージが固定化されていますが、山風ほど聡明な青年でもこう考えているのだから、当時としてはあれは正義の戦争以外の何物でもなかったのでしょう。しかし、考えてみれば、正義じゃない戦争なんてほとんどないのか。
  • 意外と感動屋で激情家です。神風部隊の記事に感動を隠さなかったり、卑劣な人間に対する侮蔑の意を隠さなかったり。
  • 昭和十九年九月二十五日の日記より。共感。

まことに虫よき話なれども、金のことにて苦労するはいやなり。 金がくだらぬものと承知しているがゆえに、そのくだらぬ金にて苦労するはいよいよいやなものなり。

  • 昭和十八年一月三十一日、給料日に同僚から奢ってもらったときの馬食の様子が凄まじいので引用します。

まず品川でカレー丼を平げる。
それから五反田へ帰ってから、自分が昨日昼探検にいってなかなか上等なものを食わせると感嘆した大橋食堂へ菊地君を案内して、 丼飯二杯、肉皿一皿、刺身一皿、芋と人参と卯の花の煮合せ一皿で、都合一人前一円十銭の大饗宴を張る。
自分はすっかりうれしくなってしまって、今度の自分の給料日には、ここで一杯飲もうととんだ約束をしてしまった。 都合今夜は丼飯三杯食べたわけで、腹は苦しくって歩くのも大儀になった。
が、自分は愉快でたまらないので、今度は自分がオゴるからと、菊地君をひっぱって或るお汁粉屋で、 お汁粉やあんみつやあべ川餅を大いに食った。 そこを出てから、もう降参降参と悲鳴をあげる菊地君の片腕をつかまんばかりにして、今度は鮨屋に入る。 菊地君が悲鳴をあげればあげるほど、自分は悠々たる態度を持つことに努力したが、 腹は張り裂けるほど張り切って苦しかった。
ほんとうに救いようのない馬鹿とはこのことだ。

「この青年が、やがては淫術炸裂しまくりのバカ忍法帖を書いて書いて書きまくるようになるかと思うと、 この先の山風に一体何が起こったのかと異常な不安に駆られますが、 改めて考えてみると、実は山風は山風のままで作家になっていったのではないかとも思えます。 真面目で感動屋で激情家で皮肉屋な山田君のままでね。
忍法帖の根底には、冷静に奇想を突き詰めて話を作っていく姿勢が見られます。 例えば「人体が取り外し可能だったら何ができるか」といったワンアイディアから始まる思考実験。 その上に、おそらくは山田青年が理想とした美しいもの、またはその逆の醜いものを載せていった結果があの小説群ではないかと。」

  • 使命に従って迷いなく死んでゆく忍者たちの誇りと悲しさ。
  • 人生経験から得られる「人間とは何か」という問いの答え。
  • 無私の愛情。

「してみると、直截的ではないものの、やはりこれはメイキングオブ山風の書だったのでしょう。 重ねて言いますが、いい読書体験でした。感謝いたします。」

◆[読書]『少女忍法帖』(明智抄、ホラー M コミック文庫)

【 amazon 24時間
題:少女忍法帖ホラーMコミック文庫: 本
続:ホラーMコミック文庫
著:明智 抄
符:ISBN4-8211-8256-4
刊:ぶんか社
年:2006/01
型:(cm): 15
頁: 349p
値:¥310

「友人に薦められたので読みました。 忍者ネタを少女漫画でファックしたような作品でした。 大変下らなくてよろしかったです。 読んだ後に何も残らないところが素晴らしいですね。」

「この読後感に何か覚えがあると思ったら、『 G の影忍』でした。 忍者ネタを使って呼吸するように嘘を吐くところがよく似ています。 「心眼センサーフルオープン!」とか「ミノフスキー隠れの術」とか。」

【 amazon 24時間
題:Gの影忍電撃コミックス: 本
続:電撃コミックス
著:こやま 基夫
符:ISBN4-840-23017-X
刊:角川(メディアワークス)
年:2005/03/26
値:¥282

「ただ、二作品を比べてみると、忍者ネタと組み合わせたものの主従関係が逆になっているところが興味深いです。」

  • 『少女忍法帖』 : 忍者漫画の皮をかぶった少女漫画
  • 『 G の影忍』 : ガンダム漫画の皮をかぶった忍者漫画

「おそらく忍者が好きで好きでたまらない忍者脳の人が描いた作品は後者のような組み合わせになるんでしょう。 この全てを忍者で語ろうとする姿勢を仮に忍者メソッドと名付けますが(ひねり一切無し)、 忍者メソッドの使い手はどのくらいいるのか調べてみました。」

「意外と隙がなくて驚きです。忍者がらみの単語がここまで開発されていたとは。」

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